フェニーチェ歌劇場友の会
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2008年2月8日号

日本のフェニーチェファンの皆様ご無沙汰いたしました。
「ロンディネ」無事初日を迎えました。プッチーニの“マイナー・オペラ”というイメージが定着しちゃってますが、今回グラハム・ヴィックのフレッシュな舞台つくりと演出のおかげでなかなか結構なSPETTACOLOに仕上がりました。とは言ってもやっぱり「バタフライ」「ボエーム」「マノン・レスコー」「トスカ」など等の「超名作」にくらべるとやっぱりもうひとつモノタリナイ感じは残りますが。
テーマとしてはほとんど「椿姫」とおなじですが、3幕でヴィオレッタがアルフレードへの「amore」に殉じるのに対してマグダはルッジェーロが親の許しを得たにもかかわらず、「もとの世界のほうが私にはあってるワ」といって別れてしまうワケですから題材としては結構面白いんですが、やっぱりプッチーニの作風にマッチしないという事でしょうか。ただただひたむきに愛を貫くのがプッチーニのヒロインですから。
それとこの作品はウィーンからの委嘱作品というこよもあってワルツがふんだんに使われていてかなりな魅力になっているんですが(と私は思うんですが)、このワルツの感覚で最後まで(マグダが古巣に戻ることを決心する場面)サラリといっちゃったらよかったんじゃあなかったかしら、なんて畏れ多いことを考えさせられるようなフィナーレです。
さて、今回主役の「マグダ」を歌われているフィオレンツァ・チェドリンスさんにいろいろお話を伺いました。フェニーチェでのオペラは初出演の彼女ですがその昔フェニーチェの合唱団に2年ほど所属されていた事もあってインタビューを快諾して下さいました。

「ラ・ロンディネ」というほとんど上演されることのないオペラに挑戦することを決心されたいきさつは?
去年の夏フェニーチェの芸術監督のマエストロ・オルトンビーナから直接アプローチがあったのね、もちろんすぐ「ロンディネ」に対して大きな興味が沸いてきたので喜んでお受けしました。「三部作」、特に「外套」以降プッチーニの作風は大きく変化してより近代的になっていくわけだけど、今まで私のレパートリーには入っていないテリトリーでした。「ロンディネ」はプッチーニ”近代化”の兆し、ともいえると思います。新しいレパートリーを開拓することはアーティストにとって大きな魅力です。それに、今回のプロデュースが国内外の劇場でもっと頻繁に取り上げられるきっかけになれば、とも思いました。

現在、イタリア国内はもとより世界的レヴェルで、プッチーニのオペラのヒロインを歌うソプラノの第一人者と言われているあなたにとって「マグダ」とは?
「マグダ」が彼女の内面にもつ問題点は驚くほど私たちのジェネレーションが持つ悩みと符号すると思う。“孤立主義”に近いほどの“個人主義”第三者とより深い感情、感覚を共有することに対する恐怖、真剣に悩んだり、苦しんだりすることができない未熟な個性、ロマンティックな“理想の恋に恋する”ことはできても自分の力で現実の恋を生き抜くことができない女性、それが「マグダ」。

ちょっと話題を変えましょう。「フェニーチェの火事」のニュース、まずなにを思った?
取り返しのつかないものを永遠に失ってしまった、絶望。私の中でなにかが「全滅」したという感覚。オペラを愛する私たちの手で実際に守らなければ、イタリア中の歌劇場が同じ運命にさらされてしまうんじゃあないかという恐怖を鳥肌の立つ思いで感じた。

2006年、ニューイヤーコンサートに出演されたわけだけど、再建されたフェニーチェの舞台に立ったときは?
昔のままのフェニーチェなのか新しいフェニーチェなのか混乱するほどだった!それだけすばらしい再建作業が行われたということだわね!ヴェネツィア市の力、フェニーチェの力、再建にかかわった人々の大きなエネルギーに感動しました。昔のフェニーチェはすばらしい音響効果で有名だったけど新フェニーチェのそれは勝るとも劣らない、本当に「奇跡」が起こったような、すばらしいの一言。

さて、フィオレンツァ・チェドリンスの「声」、将来どういう方向に発展していくのかしら?貴女のファンである私としてはぜひ「椿姫」を聞きたいんだけど。貴女のその特別な「声」そしてテクニック、それにもまして貴女の強いパーソナリティによって演じられるヴィオレッタ、最高だと思うんだけど。
もちろん私の将来のプロジェクトの中に「ヴィオレッタ」は入っているのよ。実際かなり本格的な段階まで“話”が進んでもいるの。リリコ・レッジェーロではない私のタイプの声で「椿姫」を歌う場合(チェドリンスの声はいわゆるリリコ・スピントと呼ばれる声)、問題なのは第一幕のカバレッタ。落ち着いてゆっくり勉強、準備したいと思っているんだけどなかなかそうもいかない。昔からヴィオレッタを歌うためには3人ソプラノが必要、リリコ・レッジェーロのコロラトゥーラ、ソプラノ・リリコ、ソプラノ・ドラマティコ、といわれているくらいだから。私の場合、今は亡き名ソプラノ、レナータ・テバルディがとった「音程を下げて歌う」のが一番の解決策だと思う。

これは私の個人的なアイデアなんだけど、貴女のレパートリー、イタリア・オペラだけじゃなく、たとえば「イゾルデ」あたりまで拡大させようとは思わない?
ひとつの役を演じる場合「言語」はとても大事な要素だと思う。自分が知らない言語で書かれたオペラを歌うことはほとんど不可能。それに言語だけでなくその民族の文化も深く理解していないといけないと思う。今の時点ではドイツ・オペラまでレパートリーを広げることは考えていないわね。それに「ワーグナーの声」とイタリア的声体系に接点があるとは思えない。もちろん将来なにが起こるかわからないけれど、今の所、私のレパートリーは「地中海エリア」にとどめておきたいわね!

ちょっと逆戻りするけど、パヴァロッティ・コンクールでの勝利が貴女のキャリアが大きく展開していくきっかけになったわけだけど、マエストロ・パヴァロッティについて一言。
偉大なアーティスト、非凡な美しさを持つ声、度量の大きなエンターティナー、同時に一人の人間としてもまれに見る懐の深さ持った人。いつも思っていることなんだけど、「歌う」というアクションでは本来の自分のありようがそのまま出てしまうのね、恐ろしいことだけど。だから、何かのフリをしたり、見せかけたり、といったことは絶対できません。

もちろん日本でも数々の成功を収めていられる貴女だけど、日本についてなにか一言。
ああ、すばらしい思い出!私は心から日本と日本の人々が好きになってしまいました。私の“十八番”が蝶々さんなのも何かのご縁でしょう!もう2年も日本から遠ざかっているのよ。本当に残念!私の伴侶でありマネージャーでもあるフィリッポ(フィリッポ・ミリターノ氏)ともよく日本の思い出を話し合うのよ。それに時々日本のファンの方がたからもメールをいただきます。とってもうれしい。

日本公演の予定は?
2009年と2011年に実現するかも・・・。でもまだ私から発表できる段階ではないの、残念だけど。

今日はお忙しいところ、本当にありがとう。「ロンディネ」の成功を心からお祈りします。

 

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